商いも共感されることが大切――「中商サロン」でアダム・スミスの思想を学ぶ

プレミアムフライデーの午後3時から
 中京民商では、毎月最終金曜日(プレミアムフライデー)の午後3時から、中京民商会館の3階で「中商サロン」を行っています。美味しいお茶やコーヒー、お菓子を楽しみながら、おしゃべりする会です。会員だけでなく誰でも参加できます(非会員は参加費500円)。毎回、事務局から話題提供を行っています。

利己的な人間がよい社会をつくれるか
 6月30日(金)の「中商サロン」には7人が参加。今年6月5日で生誕300年を迎えたスコットランドの哲学者、アダム・スミスについて、事務局より報告が行われました。
 スミスは一般的には『国富論』を書いた“経済学の父”として知られています。個々人の自由な行動が「見えざる手」により社会全体の利益に導かれると主張して市場原理の大切さを説いたとされます。一方で、最近では『道徳感情論』という本で他人への共感の大切さを説いていたことも知られるようになってきました。
 スミスが生きた18世紀のイギリスは、政治的な面では議院内閣制が成立し、経済的な面では産業革命が始まった時代です。従来の封建的な道徳が崩れていくなかで、人間性や道徳のあり方(富と徳との関係)が大きな問題になっていました。利己的な存在である人間は、社会の秩序を保ちながらよりよい社会へ発展させていくことができるのかが問われた時代だったのです。

他人に共感してもらえることが大切
 こうした問題意識で学問に志したスミスは、天文学や生物学など自然科学の成果にも学びながら、想像力や共感(想像の世界で相手の立場に立ってみること)を重視する学問論を確立しました。スミスは、人間の本性を、利己的であると同時に他人のことにも関心を持たずにはおれないという矛盾したものとして把握しました。他人からの共感を切望する人間は「他人の目から見て自分はどう見えるか」を気にせずにはいられません。人間は、他人との関わりのなかで、自分の心のなかに自分自身を客観的に見つめる視点(公平な観察者)を創り出し、自分自身の言動を他人から共感してもらえるようなものにしていきます。商行為も例外ではありません。自分の儲けのためなら他人を食い物にしてもいいということはないのです。

「見えざる手」は弱肉強食と真逆の思想
 「見えざる手」という言葉は、この世界(宇宙全体)はもともと調和のとれたものであるはずだという信念を背景にしたもので、弱肉強食の市場経済を肯定するようなものではありません。スミスは『国富論』で、一部の特権的な大商人の利益のために経済の自然なあり方が歪められ、庶民の生活に必要なモノが不十分にしか生産されていないことを批判する文脈で「見えざる手」の大切さを説いています。あくまでも、すべての人びとの豊かな生活を実現することが目的だったのです。
 参加者からは「アダム・スミスについてはほとんど知らなかったけど、18世紀にこんなことを考えていた人がいたというのが興味深かった」という感想が出されました。

次回「中商サロン」は7月28日
 次回の「中商サロン」は、7月28日(金)午後3時からです。中商サロンは、誰でも自由に参加できます。中京民商会員は参加無料、それ以外の方は参加費500円をいただきます。準備の都合上、参加ご希望の方は事前にご連絡いただきますと助かります。

お菓子は6月30日だったので豆政さんの水無月でした。写真は黒糖です。お皿は上坂妙さん作。

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