独学で独自の町人哲学を確立
京都市中京区の車屋町御池上る東側に「石門心学発祥之地」の石碑があります。江戸時代中期の思想家・石田梅岩(いしだ・ばいがん 1685~1744)が居宅を構え、最初に講義を行った場所です。
石田梅岩は、丹波桑田郡(現在の亀岡市)の農家に生まれ、京都に出て黒柳家という呉服屋で奉公しながら、儒学などを独学し、「心学」と称する独自の町人哲学を確立しました。黒柳家をやめて、45歳のときに自宅で講義を始めました。
心学は、勤勉、正直、倹約の大切さを平易に説く実践的な道徳で、商人たちに広く受け入れられました。
石田梅岩は、当時まだ強かった商人への偏見(他人を騙して儲けているという偏見)に対し、商取引は天下の人びとに尽くす善行であり、商人が利益を得るのは役立った人びとから得る正当な報酬だと説いたのです。ピーター・ドラッカー(1909~2005。「経営の神様」とも呼ばれた経営学者)より250年早い経営哲学とも称されます。
他人に対して分け隔てなく公正に、正直に、誠実に接するのが「商人道」です。江戸時代から明治時代にかけて活躍した近江商人も「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)の理念を持っていたことがよく知られています。
『都鄙問答』読書会を開催します
コロナ禍は、これまでの経済社会のあり方の限界を明らかにしました。大量生産・大量消費・大量廃棄を前提に、効率性を追求する資本が世界中を暴れまわり人間性を犠牲にする経済社会から、地域でお金と仕事をぐるぐる循環させて人間らしい暮らしを可能にする地域循環型経済社会へ転換していくことが求められています。「三方よし」の精神で人びとに喜ばれることを第一に心がける自営業者は、地域社会にとってなくてはならない存在です。
中京民商事務局ではこの秋、京都市中京区ゆかりの江戸時代の思想家・石田梅岩の主著『都鄙問答』(とひもんどう)の読書会をやります。 梅岩の講義が誰でも聴講無料だったことにならって、中京民商会員でなくても無料で参加できるようにしました。 関心のある方、ぜひご連絡ください!
石田梅岩『都鄙問答』読書会
第0回 8月28日(月) 午後7時~午後8時30分 石田梅岩の生涯と思想
第1回 9月19日(火) 午後7時~午後8時30分 『都鄙問答』巻の一
第2回 10月17日(火) 午後7時~午後8時30分 『都鄙問答』巻の二
第3回 11月21日(火) 午後7時~午後8時30分 『都鄙問答』巻の三
第4回 12月19日(火) 午後7時~午後8時30分 『都鄙問答』巻の四
* 会場はいずれも中京民商会館3階(両替町通竹屋町上る)です。
* 加藤周一訳・解説『都鄙問答』(中公文庫、定価968円)を使用します。
* どなたでも無料で参加できます。資料準備の都合上、参加を希望される方は、各回の前週金曜日までに、中京民商事務局(電話 075-231-0101 mail tax-110アットマークiaa.itkeeper.ne.jp)までご連絡ください。