中京民商も加わる消費税廃止中京各界連絡会は、3月16日(火)、「今年こそ消費税減税を!連続学習会①」として、立命館大学教授の松尾匡さん(「消費税5%に戻せ!京都デモ」呼びかけ人)のオンライン講演会を行いました。中京民商事務所3階に視聴会場も設けられました。松尾さんの講演の概要を紹介します。
消費税10%のもたらす世界とは
2019年10月に消費税率が2%引き上げられ10%になりましたが、コロナショック前でも、消費者物価の上昇が前年同月比1%に達したことはありません。増税分が転嫁できていないのです。懐厳しい客が逃げてしまうので、個人商店や中小零細事業ほど、消費税の転嫁は困難です。結局、消費税10%がもたらす世界とは、個人商店や中小零細事業が潰れ、全国チェーンやグローバル大企業が非正規の低賃金労働者をこきつかう格差社会にほかなりません。こんな世の中への移行を、コロナショックを利用して一挙に進めようというのが、支配層の思惑です。
中小企業淘汰路線が鮮明に
かつて竹中平蔵さんも理事長を務めた「東京財団研究所」が、2020年3月17日に発表した緊急経済提言では、「企業の退出(廃業、倒産)と新規参入による新陳代謝が不可欠」と強調し、デジタル化・オンライン化など「生産性」を高める部門に重点投資することを主張しています。安倍さんの後継を決める自民党総裁選に立候補した菅さんは、9月6日、中小企業の統合・再編を促進するために中小企業基本法を見直すと表明しました。これは、菅さんと親しいデービッド・アトキンソンさんの持論です。アトキンソンさんは、日本の生産性が低いのは小規模な企業が多すぎるせいだとして、360万社弱ある中小企業を200万社弱に統廃合するよう主張しています。「慢性的な赤字企業は、ただの寄生虫」「新型コロナウイルスの補助金も小規模事業者にはいらない」とも言っています。
「生産性が低い」とはどういうことか
彼らのいう「生産性」は、労働者1人当たりの付加価値額のことです。モノやサービスを販売した結果、どれくらいの利益が得られ、どれくらいの所得が得られたか、労働者1人当たりいくらかで測るわけです。少し考えればわかりますが、お客さんが来なくなって商品があまり売れなくなったら、労働者1人当たりの付加価値は低くなります。「生産性が低い」というと、商品を供給する側の効率が悪いとか技術が低いというような問題だと思われてしまいがちですが、もっと単純に、みんながお金を持っていなくて色々なものを買い控えているという需要側の問題なのです。アトキンソンさんたちのいう「生産性」なるものは、富裕層を相手に付加価値の高い商売をすれば上げることができます。「生産性」が低いからつぶしてしまえというのは、利益は薄いかもしれないけど庶民の生活にとってなくてはならない商売をしている中小業者を切り捨てていくことにほかなりません。
「新陳代謝」促進のため給付金を打ち切る
10月16日に初会合が行われた成長戦略会議には竹中平蔵さんとアトキンソンさんが起用されました。菅さんは、小泉内閣の総務相だった竹中さんを副大臣として支えた頃から昵懇の仲です。10月26日には、財政制度等審議会の歳出改革部会で、企業の新陳代謝を促進するため持続化給付金を予定通り終了すべきとの意見が相次いだと報道されています。11月25日に出された財政制度審議会「令和3年度予算の編成等に関する建議」は、新陳代謝の促進のため、非常時の支援を打ち切り、生産性の向上に前向きに取り組む主体の支援へ軸足を移すことを主張しています。12月21日に決定された2020年度第3次補正予算案では持続化給付金を打ち切る代わりに事業再構築補助金を創設することを盛り込みました。これは、規模拡大・「生産性」上昇、グローバル展開の方向のものを選抜支援する仕組みです。
アトキンソンさんらは、最賃引き上げ、女性活躍、グリーンなど、いわゆる「リベラル」な人たちから歓迎される主張をしていますが、これらは十分な中小企業支援策とセットでなければ淘汰の手段になってしまうもので、そういう意図で主張されていることに注意が必要です。
今年1月18日の菅首相の施政方針演説はこうした路線を全開させたものでした。菅さんは緊急事態宣言を出し渋りましたが、支援の延長を避けたかったからではないかと思われます。発令しても持続化給付金などは予定通り打ち切るつもりでした。結局、申請期限だけ1ヵ月延ばしましたが。代わりに創設された「一時支援金」は規模も期間も限定的で条件の厳しいものです。GoToトラベルなども、「どうせ使うなら高級なホテルへ」となって庶民向けの宿には恩恵が乏しく、支援のように見せかけて実は淘汰の手段になっています。