庶民は負担増、企業は優遇――与党税制改正大綱

 自民党、公明党は、12月14日、2018年度与党税制改正大綱を決定し、発表しました。
 所得税は、サラリーマンなどに適用される給与所得控除の上限を引き下げ、年収850万円を超える人が増税になります。また、住民税を払っている全ての人に課す「森林環境税」と、出国時に1,000円を徴収される「出国税(国際観光旅客税)」が創設されます。新たな税の創設は27年ぶりのことです。国と地方の合計で2800億円が増税となる見込みです。また「消費税10%への引き上げを19年10月1日に確実に実施する」と明記され、消費税大増税が大前提とされているのは大問題です。
 一方、株や分離課税の配当などは1円も増税にならず、株などの儲けで恩恵を受けている富裕層にはまったく影響がありません。企業向けには18年度から20年度までの時限措置として、賃金や設備投資を増やした企業に対し、法人税の実効税率29.74%を最大で約20%まで引き下げる案となっています。

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 今回の税制改正大綱では、所得税の基礎控除を現在の38万円から10万円引き上げて48万円にする案となっています。基礎控除を上げること自体はいいですが、きわめて不十分です。そもそも基礎控除は、日本国憲法第25条の生存権を具体化するものであるはずです。「生活費には税金をかけない」というのが日本国憲法の理念です。この立場で、基礎控除は最低生活を保障する水準へ引き上げるべきです。全商連は、当面、基礎控除を170万円(東京都1級地の1の18歳単身者の生活保護基準額)に引き上げることを要求しています。
 今回の税制改正大綱でさらに問題なのは、所得が2400万円を超える人は基礎控除を3段階で減らし、2500万円超でゼロにする、とされていることです。基礎控除は、生存権を税制面で具体化するものであり、どんな人にも一律・平等に与えられるべきものです。高所得者の負担を増やすために基礎控除を減らすというのは、基礎控除の本質を否定するもので、全く筋が通りません。高所得者に負担を増やすためには、所得税の最高税率を引き上げ、総合累進課税(株の儲けなども合算して、合計所得が大きければ大きいほど高い税率をかける)を強めればよいのです。給与控除を減らしたり、基礎控除を減らしたりするのは、所得税の仕組みをいたずらに複雑にするものです。

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